「wt%って何?」「w/w%やvol%とどう違うの?」という疑問は、初めて濃度計算に触れた人が必ず通るポイントです。この記事では、wt%(重量パーセント)の意味・計算方法・他の濃度との違い・よくある間違いまでをひと通り押さえます。砂糖水や食塩水など、日常でイメージしやすい例を使いながら、初心者でも自分で計算できるようになるところまで丁寧に解説します。
wt%とは?初心者がまず知るべき基礎
wt%(重量パーセント)の定義をわかりやすく解説
最初に押さえたい結論は、wt%とは「溶液全体に対して、溶質がどれくらいの質量割合を占めているか」を示す濃度です。数字だけ見ると難しそうですが、考え方は「ケーキの何%がイチゴか」と同じイメージで問題ありません。
より正確に書くと、wt%(重量パーセント)は次の式で定義されます。
wt% = (溶質の質量[g] ÷ 溶液全体の質量[g]) × 100
ここで重要なのは、「分母が溶媒ではなく 溶液全体」という点です。砂糖水であれば、砂糖の重さだけでなく、水と砂糖を合わせた重さが基準になります。このポイントを勘違いすると、計算結果が大きくずれる原因になります。
実務では、試薬のラベルや説明書に「NaCl 10 wt%」のように書かれていることが多く、これを正しく読み取れるかどうかで、濃度計算のスタートラインが変わります。
通常の%表記との違い(量%・質量%・w/w%の関係)
同じ「%」でも、何を基準に%を計算しているかで意味が変わります。wt%は質量を基準にしますが、他にも体積を基準にしたものなどがあり、ここを区別できないと混乱の原因になります。
よく出てくるのは次の3つです。
- 質量%(wt%、w/w%、mass%):質量を基準にした%
- 体積%(vol%、v/v%):体積を基準にした%
- 量%:文脈によって意味が変わることがあり要注意
質量%と書かれていれば、ほぼwt%と同じ意味です。一方で「量%」という表現は、日常会話レベルでは単に「割合」という意味で使われることもあり、専門的な濃度表現としては曖昧です。ラベルや論文では、wt%かvol%かをきちんと確認することが、誤解を防ぐ「見分け方」の基本になります。
溶質・溶媒・溶液のイメージ図で理解する
wt%を直感的に理解するには、「溶質」「溶媒」「溶液」の位置関係をイメージでつかむのが近道です。結論から言うと、wt%は「溶液」の中に占める「溶質」の重さの割合です。
頭の中で次のような図をイメージしてみてください。
- コップ全体:溶液(砂糖+水の全部)
- コップの中で溶けている砂糖:溶質
- もともとの水:溶媒
例えば「砂糖10g+水90g」の場合、溶質は砂糖10g、溶媒は水90g、溶液は合計100gです。このときのwt%は砂糖の重さ10gを溶液全体の100gで割って求めます。溶媒90gではないという点が、初心者がつまずきやすい「原因」です。計算前に、頭の中でコップのイメージを描く習慣をつけると、ミスがぐっと減ります。
wt%とw/w%の違いはある?表記ゆれのまとめ
w/w%・mass%・wt% は基本的に同じ意味
結論から言うと、wt%、w/w%、mass% はほぼ同じ意味の「質量%」です。表記が違うだけで、中身の考え方は同じと見て大丈夫です。
よく使われる表記を整理すると、次のようになります。
| 表記 | 読み方の例 | 意味 |
|---|---|---|
| wt% | ウェイトパーセント | 質量%(重量パーセント) |
| w/w% | ウエイト by ウエイト | 質量/質量% |
| mass% | マスパーセント | 質量% |
どれも「質量を基準にした%」なので、実務では「≒同じ」と理解して構いません。ただし、レポートやレシピを書く側としては、同じ文書の中で表記を混在させないことが大切です。読み手が混乱しないよう、自分のノートでは「wt%に統一する」と決めておくのがおすすめです。
論文・教科書での使われ方の違い
実際の論文や教科書では、分野や出版社によって使う表記が少しずつ違います。「なぜ表記が違うのか」を知っておくと、読み手として迷いにくくなるので、簡単に背景を押さえておきましょう。
- 英語論文:w/w%、w/v%、v/v% など「○/○%」表記が好まれることが多い
- 日本語教科書:質量%、質量パーセント、wt% が混在
- 実験マニュアル:短く書けるwt%、mass%が使われがち
読み方の「見分け方」としては、w/w%と書かれていれば質量%、w/v%と書かれていれば質量/体積%です。パッと理解できないときは、「分子」「分母」に何が来ているかを意識して読むと整理しやすくなります。
wt%の計算方法を実例で理解しよう
まず覚えるべき基本式(wt%=溶質÷溶液×100)
計算に入る前に、必ず覚えておきたい基本式があります。それが次の式です。
wt% = (溶質の質量 ÷ 溶液全体の質量) × 100
ここでの「溶液全体」は、溶質+溶媒の合計です。原因となるミスのほとんどは、分母に溶媒だけを入れてしまうことなので、公式を書くたびに「溶質+溶媒」と心の中で唱えておくと安心です。
実際の計算では、小数第何位まで答えるかは問題設定によりますが、まずは計算途中の数字をメモしておき、最後に丸めるのがよくある「対処法」です。
ステップでわかる計算の流れ
wt%計算の流れは、毎回同じステップで進みます。手順をパターン化して覚えることが、計算ミスを減らす行動例になります。
- 溶質の質量を確認する(例:砂糖10g)
- 溶媒の質量を確認する(例:水90g)
- 溶液全体の質量を計算する(10g+90g=100g)
- 公式に代入してwt%を計算する
このとき、メモ用紙やノートに「溶質」「溶媒」「溶液」を縦に書き出しておくと、どの数字がどこに対応しているかが一目でわかります。「いきなり計算機に入れない」のが、初心者が落ち着いて計算するためのコツです。
代表例:砂糖水・食塩水の計算(初心者用の落とし穴も)
実際の計算例で、具体的な数字の動きを見てみましょう。ここでは砂糖水と食塩水を例にします。
例1:砂糖10gを水90gに溶かした砂糖水のwt%
- 溶質:砂糖10g
- 溶媒:水90g
- 溶液:10g+90g=100g
wt% =(10 ÷ 100)×100=10 wt%
例2:食塩5gを水95gに溶かした食塩水のwt%
- 溶質:食塩5g
- 溶媒:水95g
- 溶液:5g+95g=100g
wt% =(5 ÷ 100)×100=5 wt%
初心者がよくやってしまう間違いは、「5 ÷ 95 ×100」としてしまうことです。これは「溶液全体」ではなく「溶媒だけ」を分母にしているので、別の意味の値になってしまいます。計算の前に、「分母に入っている数字は、砂糖+水の合計か?」をチェックする習慣をつけましょう。
章末チェック問題(1問ミニ問題)
ここまでの内容を確認するために、簡単なチェック問題を1問だけ解いてみましょう。
問題:食塩8gを水92gに溶かしました。この食塩水の濃度は何wt%でしょうか。
自分で計算してみたあと、次の答えで確認してみてください。
【答え】溶液全体の質量は 8g+92g=100g なので、wt% =(8 ÷ 100)×100=8 wt% です。分母に92gを使ってしまった場合は計算式を見直し、「溶液全体」を意識し直すのが良い復習になります。
2つの濃度を混ぜたときのwt%はどう計算する?
異なる濃度を混合する場合の考え方
別々のwt%同士を混ぜたとき、単純に「平均をとればいい」と思ってしまうのはよくある誤解です。正しい考え方は、「溶質の量を足して、溶液の量も足してから、あらためてwt%を計算する」という流れになります。
原因となる勘違いは、「5%と15%を同じ量だけ混ぜたら10%」という発想のまま、量の違いを無視してしまうことです。実際には、それぞれの「溶質の量」がどれだけあるかをきちんと計算しないと、正しい混合後のwt%は求まりません。
計算手順を例題で解説
具体的な例で、混合後のwt%を計算するステップを確認してみましょう。
例:5 wt%の食塩水100gと、15 wt%の食塩水200gを混ぜたときの濃度
- それぞれの溶質(食塩)の量を計算する
- 5 wt%の食塩水:100g × 0.05=5g
- 15 wt%の食塩水:200g × 0.15=30g
- 溶質の量を足す:5g+30g=35g
- 溶液全体の質量を足す:100g+200g=300g
- 混合後のwt%を計算する:35g ÷ 300g ×100≒11.7 wt%
このように、「溶質を足す → 溶液を足す → 公式で計算」の3ステップをきちんと踏めば、混合後の濃度も落ち着いて求められます。ノートには、溶質の量を別行に書き出しておくと、頭の中が整理されやすくなります。
温度や密度を考慮する必要はある?
初学者が気になるポイントとして、「混ぜるときに温度や体積の変化まで考えないといけないの?」という不安があります。結論として、wt%は質量ベースの濃度なので、基本的には温度変化や体積変化の影響を受けにくいとされています。
家庭レベルや一般的な実験レベルでは、少し温度が違っても質量はほとんど変化しないので、通常は「質量だけを使って計算すればよい」と考えて問題ありません。一方で、密度や体積を正確に扱う必要がある精密な実験では、専門家の指定している条件やマニュアルに従うことが大切です。
混合問題で迷ったときの「対処」としては、「wt%なら原則として質量だけ考える」「密度が出てきたときは、何を計算させたいのかを問題文から読み取る」という2つのステップを意識すると整理しやすくなります。
wt%とvol%の違いは?正しい使い分けを覚える
wt%=質量ベース、vol%=体積ベース
wt%とvol%の違いは、とてもシンプルです。wt%は「重さ(質量)」で考える濃度、vol%は「体積」で考える濃度です。どちらも%表示ですが、基準にしているものが違うため、値も変わることがあります。
液体同士を混ぜるとき、体積は温度や圧力で変わりやすいですが、質量は変わりにくいという特徴があります。そのため、温度の影響を受けにくい濃度を表したいときはwt%、体積で企業や製品がルールを決めているときはvol%が採用されることが多いです。
状況によって使い分けが必要な理由
なぜ使い分けが必要かというと、「知りたいこと」や「現場の扱い方」が違うからです。例えば、液体製品をボトルに詰めるときは体積が重要ですが、化学反応の量を計算するときは質量のほうが扱いやすいことが多くなります。
具体的な「行動例」としては、次のように使い分けると覚えやすくなります。
- 実験で反応量を正確に決めたいとき:wt%(質量で秤量する)
- 製品ラベルや日常会話での濃さの目安:vol%が使われることもある
ラベルを読むときは、「wt%なのかvol%なのか」をまず確認し、その場が「重さ重視」なのか「見た目の量重視」なのかをセットで意識すると、誤解が減ります。
ありがちな誤解と正しい選び方
初心者がよくしてしまう誤解は、「wt%とvol%は単位だけ違って中身は同じ」と思ってしまうことです。実際には、同じ溶液でも、wt%とvol%で数字が異なることがあります。
正しい選び方の「見分け方」としては、次の流れがおすすめです。
- ラベルや資料に、wt%なのかvol%なのか書いてあるか確認する
- 実際の作業が「重さを量る」のか「体積を量る」のかをチェックする
- 必要に応じて、どちらの%なのかをメモに書き添えておく
この3ステップを習慣にしておくと、「思っていたより濃かった」「薄かった」というトラブルの対処がしやすくなります。
wt%・vol%・mol%の違いを比較しよう
3つの濃度の関係を一覧表でまとめ
ここまで出てきたwt%、vol%に加えて、mol%(モル%)やモル濃度も化学ではよく使われます。全体像をつかむために、代表的な3つの濃度を表で整理しておきます。
| 種類 | 基準 | よく使う場面 |
|---|---|---|
| wt% | 質量(g) | 試薬調製、温度変化に強い表記 |
| vol% | 体積(mL、Lなど) | 液体製品の濃度表示、混合の目安 |
| mol% 等 | 物質量(mol) | 化学反応式、反応量計算 |
この表を頭に入れておくと、「どの濃度が何を基準にしているか」を一目で見分けられるようになります。特にmol関連の濃度は、反応の「粒の数」を意識するときに使われます。
用途の違い(食品・化学・医療など)
現場ごとに重視しているポイントが違うため、使われる濃度の種類も変わります。ざっくりとした「用途別の傾向」を押さえておくと、資料を読むときに迷いにくくなります。
- 食品:糖度や塩分濃度など、質量%(wt%)や、場合によっては体積ベースの表示
- 化学実験:反応量の厳密さが必要なことが多く、wt%やモル濃度が使われる
- 医療:生理食塩水などの濃度表示には質量%が使われることが一般的
「なぜこの分野ではこの濃度が使われるのか」を自分なりに一言で説明できるようになると、理解が一段深まります。
初心者が混同しやすいポイント
初心者が特に混同しやすい原因は、「%」という記号だけを見て、中身の定義を意識しないことにあります。同じ数字でも、wt%とvol%とmol%では意味がまったく違います。
混同を避ける「行動例」として、ノートやメモでは必ず「wt%」「vol%」「mol%」のようにアルファベット付きで書くようにしましょう。単に「5%」とだけ書く癖をやめるだけで、後から見返したときの理解度が大きく変わります。
wt%のメリットとデメリット
メリット:温度に強く、計算がシンプル
wt%の最大のメリットは、温度変化の影響を受けにくいことです。体積は温度によって膨らんだり縮んだりしますが、質量は基本的に変わりません。そのため、温度の条件が多少変わっても、wt%で表した濃度は安定しています。
また、秤で量るだけでそのまま計算に使えるので、計算がシンプルで、実務や実験のミスを減らしやすいという利点もあります。家庭でも、キッチンスケールがあれば簡単に質量ベースの混合ができるので、再現性のあるレシピ作りにも応用できます。
デメリット:体積比較には弱い
一方で、wt%は体積の感覚とはずれやすいというデメリットがあります。例えば、同じ10 wt%でも、密度が違う液体同士では「見た目の濃さ」や「入る量」の印象が変わることがあります。
「コップにどれくらい入るか」「ボトル何本分か」といった体積ベースの感覚で考えたい場面では、wt%だけを見て判断するとイメージがずれる可能性があります。そのため、体積が重要な場面ではvol%やモル濃度など、別の濃度表現を組み合わせると理解しやすくなります。
他の濃度との比較で見えるwt%の特徴
wt%の特徴を一言でまとめると、「温度に強く、秤さえあれば扱いやすい濃度」です。vol%が「瓶のラベル向き」、mol%が「反応計算向き」だとすると、wt%はその中間で、実験にも日常にも使いやすいバランス型と言えます。
濃度を扱うときは、「今は何を知りたいのか」「どんな道具が手元にあるか」を意識して、wt%・vol%・mol%の中から適切なものを選ぶと、無理なく使い分けができるようになります。
wt%が実際に使われる場面
食品(食塩水・糖度)
食品分野では、食塩水や砂糖水の濃度を表すときにwt%がよく使われます。例えば、料理本に「10%の食塩水」と書かれている場合、多くは質量%を意味します。
家庭での具体的な行動例として、10 wt%の食塩水を作りたいときは「水900gに対して食塩100g」と考えます。キッチンスケールを使えば、測り間違いが少なく、同じ味を再現しやすいのがメリットです。
化学実験(試薬調製)
化学実験の現場では、試薬の調製や標準溶液の作成にwt%が広く使われます。秤で固体試薬を量り取り、水や溶媒を加えて所定の質量になるまで溶かす、という流れが基本です。
例えば「NaCl 5 wt%溶液を100g作る」場合は、NaClを5g量り取り、水を加えて溶液が合計100gになるまで調整します。このとき、最初に水をぴったり95g量るのではなく、少なめに入れてから最後に調整すると、過不足を防ぎやすくなります。
医療(生理食塩水など)
医療の現場では、生理食塩水(0.9% NaCl)などの濃度表示に質量%が用いられます。ここでいう0.9%は、一般に質量%として理解されますが、実際の調製や使用については医療の専門的な管理が必要になります。
学習者の立場で大切なのは、「0.9%の意味がwt%として説明されることが多い」点を理解しておくことです。具体的には、100gの溶液の中に0.9gの食塩が含まれているというイメージで考えると、wt%の感覚がつかみやすくなります。実際の医療行為や調製について詳しく知りたい場合は、必ず専門家の解説や公的な資料を参照してください。
日常でのわかりやすい例え
wt%を日常的なイメージで表すと、「1kgの生地のうち、砂糖が何g入っているか」のような感覚が近いです。パンやお菓子作りでは、粉に対する砂糖や塩の割合を%で管理することがありますが、これも質量ベースの考え方です。
例えば、パン生地1000gに対して砂糖50gなら、砂糖は5 wt%と見ることができます。このように、身近な「重さの割合」にwt%を当てはめて考えると、数学や化学が苦手な人でも直感的に理解しやすくなります。
実践問題でwt%を完全マスター
基礎編:食塩水の計算問題
ここからは、実際に手を動かしてwt%の計算に慣れていきます。まずは、基礎的な食塩水の問題から取り組んでみましょう。
問題1:食塩6gを水94gに溶かしました。この食塩水の濃度は何wt%ですか。
【考え方】溶質は食塩6g、溶液全体は6g+94g=100gなので、wt% =(6 ÷ 100)×100=6 wt%となります。計算パターンとしては、これまでの例題と同じです。
応用編:エタノール水溶液の計算問題
次は少し応用的な例として、エタノール水溶液を扱ってみます。ここでも、wt%として考える限りは質量だけを見ればよいことがポイントです。
問題2:エタノール20gと水80gを混ぜて溶液を作りました。この溶液中のエタノール濃度は何wt%ですか。
【考え方】溶質:エタノール20g、溶液:20g+80g=100gなので、wt% =(20 ÷ 100)×100=20 wt%です。エタノールが液体であっても、wt%では質量で考えることを意識すると、混乱が少なくなります。
よくある間違いと避けるためのコツ
練習問題を解いていると、いくつかのパターンで間違えやすいことに気づきます。代表的なものと、その対処方法をまとめておきます。
- 分母を溶媒だけにしてしまう:必ず「溶質+溶媒」で溶液全体を先に計算する
- %を掛け忘れる:最後に×100するのを忘れないよう、途中式に「×100」を書いておく
- 単位を意識しない:gとkgが混ざらないよう、最初に単位をそろえる
これらのミスの原因は、頭の中だけで計算しようとすることにあります。ノートに「溶質」「溶媒」「溶液」「公式」の4行を書いてから計算する、というシンプルな行動だけで、かなりの割合でミスを防ぐことができます。
章末チェック問題(複数問)
最後に、少しだけバリエーションのある問題をいくつか解いてみましょう。答えはすぐ下に書いておくので、自分で計算してから確認してみてください。
問題3:砂糖15gを水135gに溶かしました。この砂糖水の濃度は何wt%ですか。
問題4:10 wt%の食塩水200gと、5 wt%の食塩水100gを混ぜました。混合後の濃度は何wt%ですか。
【答え3】溶液全体は15g+135g=150gなので、wt% =(15 ÷ 150)×100=10 wt%。
【答え4】10 wt%の食塩水200gには食塩が20g、5 wt%の食塩水100gには食塩が5g含まれています。溶質合計は25g、溶液合計は300gなので、wt% =(25 ÷ 300)×100≒8.3 wt%となります。
wt%でよくある誤解と落とし穴
溶質の重量だけを%だと勘違いする
もっとも典型的な誤解は、「溶質の重さが全体の何%か」ではなく、「溶媒に対して何%か」と考えてしまうことです。この勘違いの原因は、「水100gに対して食塩10gだから10%」という短い言い回しに慣れてしまうことにあります。
正しい対処としては、「必ず溶質+溶媒で溶液全体を計算する」というルールを自分の中で固定してしまうことです。ノートに「wt%=溶質 ÷ 溶液」と大きく書いて貼っておくのも、一つの実践的な工夫です。
体積をそのまま混ぜてしまう誤り
もうひとつの落とし穴は、体積で「半分ずつ」混ぜたつもりなのに、実は質量では半分になっていないというケースです。密度が違う液体を同じ体積だけ混ぜた場合、重さの比率は変わってしまいます。
wt%を使うときは、体積ではなく質量で混ぜることが基本です。もし体積でしか量れない場合は、「本来は密度が必要になる」「簡略化してよい条件かどうか」を確認してから計算するようにしましょう。
密度を考慮すべきケース・しなくてよいケース
密度を考慮すべきかどうかは、「体積で指定された量を、質量ベースの濃度に変換したいかどうか」で判断するとシンプルです。例えば「100mLの溶液」とだけ書かれている場合、質量がわからないとwt%に直接変換できません。
一方で、「すでに質量が全部わかっている」「秤で量っている」のであれば、密度をわざわざ持ち出す必要はありません。迷ったときの行動例としては、「問題文に密度が出てきたら、体積と質量を行き来させたい場面だと考える」と、判断の糸口になります。
図で理解するwt%の考え方
重量バランス図
紙とペンだけでできる簡単な「重量バランス図」を描くと、wt%のイメージが一気につかみやすくなります。結論として、「溶質」と「溶媒」を両端に書き、その合計が「溶液」になる図を描くだけで、計算の流れが整理されます。
例えば、左に「砂糖10g」、右に「水90g」、真ん中に「溶液100g」と書きます。その下にwt%の公式を書くと、どの数字がどこから来ているかがひと目でわかるので、暗算よりもずっと安心して計算できます。
混合後のイメージ図
混合の問題では、それぞれの溶液に含まれる溶質の量を、四角形やバーの長さで表すイメージ図が役立ちます。バーの長さを「溶液の量」、塗りつぶした部分を「溶質の量」と考えると、混ぜたあとの濃度が視覚的に想像しやすくなります。
例えば、5 wt%と15 wt%の溶液を混ぜるとき、色の濃いバーと薄いバーを描き、混ぜたあとのバーは中間の色になる、といったイメージです。こうした図は、「どちらが元々濃いか」「混ぜた結果、濃度が上がるか下がるか」の見分け方にも役立ちます。
体積・密度との関係を直感でつかむ
wt%と体積・密度の関係は数字だけだと分かりにくいですが、「同じ体積でも、重い液体はずっしり、軽い液体はふわっとしている」と考えると直感的に理解しやすくなります。
例えば、同じ100mLでも、密度の高い液体のほうが重く、その分wt%で見たときの溶質の量も変わります。こうした感覚を持っておくと、「体積で混ぜるときは密度が関係する」「質量で混ぜるwt%は温度に強い」という基本的な違いが、頭の中でつながってきます。
濃度計算で覚えておくと便利な豆知識
0.9%生理食塩水を使った理解のコツ
0.9%生理食塩水は、wt%をイメージするのにとても便利な具体例です。100gの溶液の中に0.9gの食塩が入っている、という意味で理解できます。
身近な行動例として、500mLの生理食塩水があると仮定し、「これがもしほぼ水と同じ密度だとしたら、食塩は何gくらいかな?」と考えてみるのも良い練習になります。厳密な値は専門的な資料に任せるとしても、「だいたいこのくらい」という感覚を持っておくと、wt%のイメージが定着しやすくなります。
密度が不明な場合の扱い
問題や実務で「密度が書かれていないけれど、体積だけが与えられている」という場面があります。この場合は、何をどこまで近似してよいかを判断するのがポイントになります。
一般的な水溶液であれば、「水とほぼ同じ密度」として扱うこともありますが、これはあくまで簡略化の一例です。正確な計算が必要なときは、密度がわからない限り、体積と質量を厳密に行き来させることはできないと理解しておくことが大切です。
「とりあえずこれだけ覚えればOK」の最低限まとめ
濃度計算に慣れていない人は、まずは次の3点だけを頭に入れておけば十分です。
- wt%は「溶液全体」に対する「溶質の重さ」の割合であること
- 分母は必ず「溶質+溶媒」の合計であること
- 混合するときは、それぞれの溶質量と溶液量を足してからwt%を計算すること
この3つさえ押さえておけば、多くの基礎的なwt%の問題には対応できます。そこから少しずつ、vol%やmol%との違いを足していけば、無理のないステップで理解を広げていけます。
この記事のまとめとwt%の覚え方
本記事の要点まとめ(箇条書き)
最後に、この記事で押さえたポイントを箇条書きで整理しておきます。
- wt%は「溶液全体」に対する「溶質の質量」の割合を表す濃度
- wt%、w/w%、mass%は基本的に同じ意味で、質量%を示す
- 計算の基本式はwt%=溶質÷溶液×100(分母は溶質+溶媒)
- 混合問題では、それぞれの溶質量と溶液量を足してから、あらためてwt%を求める
- wt%とvol%は、質量ベースか体積ベースかの違いに注意する
- wt%は温度に強く、秤があれば扱いやすい濃度である
日常の例でイメージ定着
wt%を覚えるコツは、数字を公式だけで終わらせず、日常の重さのイメージと結びつけることです。砂糖水、食塩水、パン生地の配合など、身近なものを思い浮かべて、「このレシピは何wt%くらいかな?」と想像してみると、記憶に残りやすくなります。
スーパーで商品ラベルを眺めるときも、「これはwt%かな?vol%かな?」と考えてみると、自然と「見分け方」の練習にもなります。日常の小さな観察を積み重ねることが、数字に強くなる一番の近道です。
3行で復習するwt%
最後に、wt%を3行でおさらいしておきます。
wt%は、溶液全体に対する溶質の質量割合を表す濃度です。
計算は「wt%=溶質の質量 ÷ 溶液全体の質量 ×100」の公式で行います。
混乱したときは、「分母は溶質+溶媒」「質量ベース」という基本に立ち返ればOKです。

